東京電力が福島第1原発3号炉で導入をめざしているMOXプルトニウム燃料は、MOXが製造されていたベルギーからフランスへの輸送が、フランス政府によって延期される事態に追い込まれている。

ベルギーでのMOXプルトニウム燃料の契約は、プルトニウム燃料製造会社COMMO社(コジェマ社とベルゴニュークリア社の合弁)と東京電力と契約している東芝の下で進められている。燃料は、ベルギーの北オランダとの国境の町デッセルで製造されている。最終製造は、ベルゴニュークリア社からほど近いFBFC社(コジェマ社とフラマトム社の合弁)で行われている。


輸送延期までの動き

5月中旬:グリーンピース、MOX製造工場周辺での監視を開始し、ベルギー政府に対し、輸送の安全性について問題提議。

5月23日:グリーンピースは、FBFC社に2台のトラックがプルトニウム集合体各8体、合計16体を搭載し、ラアーグに向けベルギーを出発する予定で待機しているのを確認。さらに2回目の輸送が、6月後半にもう2台のトラックで行われる予定だった。

5月25日:ベルギーからフランスへの輸送が行われる予定だった。

6月4日:輸送はフランス政府の要請により正式にキャンセルされた、とベルギー政府が確認。また政府はデッセルでおよそ110kgのプルトニウムがトラックから降ろされているのを確認した。

ベルギーの内務省は、MOXプルトニウム燃料輸送はテロリストから攻撃されやすいと公式に認めている。内務省は、6月4日の声明で、
「輸送の遅れについての本当の理由は、フランスの受け入れ会社が最後になって輸送を中止したからである。これは明らかにフランス政府の要望によるものである。コジェマ社経営陣が政府と協議の上輸送は行えない、と判断したものである。このような輸送での国際的なガイドラインは、受け入れ側の明確な合意が要求される。そうすることにより、受け入れ側は、輸送を安全に受け入れる必要な手段を講じることができる」
と述べている。

東京電力は、欧州の人々の懸念に耳を傾ける責任がある。また日本までの海上輸送の周辺国についても同様である。彼らのだれも危険なプルトニウムの輸送を望んではいないし、搬入先の福島の市民も望んでない。MOXプルトニウム燃料の輸送は、欧州でも海上でも福島での搬入でも安全ではない。グリーンピースは、東京電力に対し今年後半に予定されているMOXプルトニウム燃料の輸送計画を中止するよう要請する。

グリーンピースは、現在デッセルで新しい動きに備え監視を続けている。警備面、安全面の不十分さ、ベルギーからフランスへの輸送周辺の市町村への脅威、そういった輸送の詳細をグリーンピースのホームページ(グリーンピース・インターナショナルのホームページ、英語)で公開している。