3月18日、東京おもちゃショーで玩具の脱塩ビを訴えたボランティア3名は、その直後に逮捕され、国際的に悪名高い代用監獄に、勾留理由も明確に提示されないまま11日間も勾留されました。(29日釈放)
さらに23日、捜査機関は、グリーンピース・ジャパン事務所と事務局長宅を家宅捜索しました。
これら捜査機関による理不尽な対応は、すでに海外メディアもとりあげています。アムネスティ・インターナショナルやスウェーデン環境大臣もプレスリリースを発表しました。
グリーンピース事務局長に対する事情聴取は今もなお続行されています。市民運動への介入・不当弾圧という意味では、今もなお問題は終わっていません。

3月18日、グリーンピースは、「99東京おもちゃショー」(有明・東京ビッグサイト)で、「大好き・おもちゃ。やめよう! 塩ビ」という20m四方の大横断幕を広げ、玩具メーカー約150社に対して脱塩ビを訴えた。同時に、各国の玩具メーカーによる塩ビ玩具の取組みをまとめた”成績表”一覧を発表した。

97年にグリーンピースが玩具(歯固め、ガラガラ、ほ乳瓶の乳首も含む)を分析し、有害な可塑剤が製品重量の約半分近くも含まれている物があると指摘して以来、軟質塩ビ問題は世界的に注目されている。

世界各国で、脱塩ビ玩具への取り組みが続いている。グリーンピース・ジャパンも、日本玩具協会ならびに厚生大臣と環境庁長官に、玩具向け塩ビ使用の早急な禁止を要請し続けてきた。
しかしながら、日本では国レベルでの対策はまったく取られていない。フタル酸エステル類* の耐容一日摂取量すら設定されていない。また、大手メーカーは、塩ビ玩具の段階的廃止という方針すら掲げていない。

* 軟質塩ビ玩具には、発がん性の恐れのあるフタル酸エステル類などが可塑剤として使用されている。また、塩ビの生産および廃棄焼却の際にはダイオキシンが発生する。


「おもちゃショー」会場関係者からの警告を受けたグリーンピースは、自主的に予定よりも早く撤収した。しかし、大横断幕を広げた3人のクライマーが深川警察署に逮捕された。逮捕理由は、建造物侵入、威力業務妨害だという。

3人は、一般市民が自由に出入りできる建物屋上から大横断幕を掲げた。つまり、建造物内部に侵入してはいない。
また、主催者である日本玩具協会からの被害申告もでていない。日本玩具協会会長および事務局長との面談の際にも、業務が妨害されたとの発言はなかった。当然、告訴もされていない。


3月20日、東京地方検察庁は、東京地方裁判所に3人の身柄の拘留請求を行なった。最長で4月9日まで、3人は勾留される可能性がある。
3月21日、グリーンピースは準抗告の申し立てと勾留理由開示請求を行なったが、準抗告は東京地裁によって棄却された。

逮捕された3人はクライマーとしての訓練を積んでいるが、本業は別にあり、今回はアピール行動のためにボランティアとして来日していた。氏名国籍職業は、下記の通り。
・Kirsty Hamilton (女性・オーストラリア)
ロッククライミングのインストラクター
・Mark Watson(男性・ニュージーランド)
出版社勤務
・Richard Pearson(男性・ニュージーランド)
ボート整備

3人は今、代用監獄に収容されている。日本以外の先進国では、代用監獄は警察署とは別に設置され、不当な取り調べを阻んでいる。しかし、日本では警察署の中にあり、これまでさまざまな人権侵害が指摘されてきた。そのため、国際人権保護団体のアムネスティ・インターナショナルなどから、非難を受けている。


グリーンピース・ジャパンでは、クリスティ、マーク、リチャードをできるだけ早く代用監獄から出すよう要求しています。皆様にも、ぜひ、お力をお貸しいただければと思います。

該当連絡先に、電話、手紙、FaxまたはE-mailで、「現在、拘留されているグリーンピースのボランティアのクリスティ、マーク、リチャードの釈放を要求します」という主旨のご意見をぜひお送りください。
また、グリーンピース・ジャパン)宛に3人への激励のメッセージを送ってください。3人に届けます。


3月23日午前09:57、グリーンピース・ジャパン事務所(渋谷区代々木1-35-1)に約20名の深川警察署員が家宅捜索に入った。
事務所の外では機動隊のトラック等3~4台で約100人もの制服の警察官が待機するという、ものものしい厳戒体制だった。
事務局長の志田早苗と総務部長の二人以外の全スタッフ9名は、事務所内から排除された。

家宅捜索は12:49から事務局長宅にも及び、15:05に終了した。押収物は、朝日、毎日、読売の切抜記事のコピー1枚。

グリーンピースは、これら不当な家宅捜索と、3人のボランティアの不当勾留に対し、強く抗議する。

これは、日本の市民運動に対する妨害である。
海外の同様の事例では、平和的アピール行動に対してこれほど長期間不当な拘束が続けられている事例すらない。


塩ビやダイオキシンは日本では緊急の問題である。その対策を求める正当な訴えに対して、警察は、不当逮捕、それに次ぐ家宅捜索へと対応をエスカレートさせている。

今回のアピール行動の目的は、乳幼児の健康を脅かす塩ビ玩具の廃止を求めることである。この日本で、健康や環境保護を求める表現行為が許されないことは、今後の環境保護活動への市民参加の道を阻むものとなりかねない。
NPO法によって市民の意見を行政に活かす仕組みが育ちつつある現在、捜査当局の行動は、よりよい市民社会への流れを大きく後退させるものである。

すでに今回の捜査機関による理不尽な対応を、海外メディアもとりあげている。今後、国際的な問題になっていくことだろう。


グリーンピースは3月24日、拘留されている3人のボランティアを即刻解放するよう、世界20ケ国の日本大使館に対して説明を求め、抗議を行った。
3人は現在のところ起訴されていないが、当局は建造物侵入と威力業務妨害で起訴するよう示唆している。

ヨーロッパ、アジア、北米、南米の日本大使館前では、グリーンピースの活動家が、口にテープを張られた囚人の姿で抗議を行った。
グリーンピースは、国際人権法の下で表現の自由が許されるよう日本政府に対し要請している。

「塩ビ玩具の危険性から子ども達を守るために公共の建物で平和的抗議を行った活動家を勾留するのは不当である。またグリーンピース・ジャパンの事務所が家宅捜索されたことは、警察が国内での批判的な声を黙らせようとしている」
(グリーンピース・インターナショナル事務局長、ティロ・ボーデ)

「グリーンピースの3名の活動家が、警察拘留場に拘禁され続けている。日本において人権活動家を閉じ込め黙らせるために拘禁手続きが悪用されている恐れがあると考える」
(国際人権保護団体アムネスティ・インターナショナル、23日付リリース)

日本の拘禁手続きは、昨年11月国連人権委員会でも批判をうけている。


抗議行動を実施した国:

チェコ、ドイツ、オーストリア、イタリア、オランダ、英国、ベルギー
フランス、スペイン、スイス、デンマーク、スウェーデン、レバノン、
イスラエル、米国、カナダ、メキシコ、オーストラリア、
ニュージーランド、中国(香港)

3月24日(水)の東京での動き:下記3省庁への申し入れと記者会見

・15:15:外務省
・15:40:環境庁環境保健部
・16:00:法務省
・16:30:記者会見(於、参議院議員会館第一会議室)

申し入れ参加者と記者会見出席者は、下記6名

・衆議院議員、保坂展人
・参議院議員、福島瑞穂
グリーンピース・ジャパン事務局長、志田早苗
・逮捕されたRichard Pearsonのパートナー、Rochelle Constantine
・逮捕されたKirsty Hamilton のご両親、Ian & Caroline Hamilton


3月25日、東京地方裁判所第427号法廷で行われた「勾留理由開示請求の公判」に関して、閉廷後ただちに開催した記者会見の模様。

海渡弁護士からの報告

誰でも入れる東京ビッグサイトの、「見本市会場に入ったこと」が住居侵入にあたる、と、裁判所は述べた。つまり、垂れ幕を掲げる目的で入った時点で住居侵入であるのだ、という理解を示した。
東京おもちゃショーの業務を妨害したと言っているが、なぜ威力を用いて妨害したのか、威力の対象は誰なのか、どういう業務が妨害されたのかの釈明については、一切答えなかった。
ご存知のようにグリーンピースは、同じような趣旨のキャンペーンを世界中でやっているが、類似のキャンペーンで逮捕された事例はほとんどない。このような非常に過剰な反応に対して、世界中から驚きの声が寄せられている。

保坂展人議員の発言

昨日、ご両親やパートナーとともに、外務省や環境庁にも行ってきた。いずれの担当者からも、グリーンピースは大切なパートナーだ、という言葉が聞かれました。外務省では、大変不幸な事件が起きた、というふうに言っています。
つまり環境問題でのグリーンピースの問題提起や調査、指摘は、日本政府にとっても、敵対的なものではなく、パートナーシップを取っていかなければならないものだ。と、それぞれのセクションは認知しているにも関わらず、今日裁判所の勾留の理由開示、検察側の請求を聞いていると、まるで「人権鎖国」、という気がする。

キャロラインさん(逮捕されたカースティ・ハミルトンの母)

いま法廷からもどってまいりましたが、正直に言って大変打撃を受けています。言うことに対して聞く耳を持っていただけないことは、信じられないことです。
ご存知のように、グリーンピースは大変に平和な組織であり、その事実をもっとよく知ってほしいと思う。

イアンさん(逮捕されたカースティ・ハミルトンの父)

裁判所に出されている証拠からも明らかなように、おもちゃショーの主催者からもなんら苦情は出されていません。また、国民に対してリスクを与える行動も行っておりませんし、また財産に対する被害を及ぼすということもまったくないわけです。それなのに勾留がなされているということは大変に驚くべきことであります。

ロシェル・コンスタンチンさん(逮捕されたリチャード・ピアソンのパートナー)

私が初めて日本に参りましたのは、1993年のことでした。船で、他のグリーンピースの仲間たちと一緒に日本に到着し、日本ではヒーローだというふうに見られました。なぜならば、私たちはその時、ロシアが日本海に核廃棄物を投棄しようとするのを阻止するために来たからです。マスコミが大々的に取り上げて下さいました。
それから6年たった現在、私はまた日本に参りました。今回は私のパートナー、リチャード・ピアソンの釈放を求めて参ったわけです。彼は何も悪いことをしていません。放射性廃棄物の時と同じように、同じ危険な問題に関して、日本の人たちに警告を発するために彼はやってきたわけです。
(ちょっと涙ぐんで)私の姿を見ればおわかりのように、本当に失意の念にかられております。まだ有罪判決を受けたわけでもない、裁判所で裁判を受けているわけでもないのに、彼は勾留されているのです。

関根彩子(グリーンピース・ジャパン、有害物質問題キャンペーナー)

オーストラリアやデンマークなどでは、塩化ビニールのおもちゃに関してはすでに規制がかかっています。アメリカでも子どものおもちゃには有害物質の入った塩化ビニールなどを使わないようにと業界に対して通告を出しています。カナダもそうです。
このように、対応の早い国ではすでに国のレベルで「塩ビをやめる」ということが法律でさえ規制されている段階であるのに対して、日本で同じようなことを訴えようとすると、それはこういう形になって返ってくるのです。
こういった障害があるということは、日本という国が、人の健康であるとか環境の健全性であるとかについて、いかに低い認識しか持ち合わせていないかということを示しているものでもあると思います。これに対しては、同様の運動をしているNGOと連携をして、徹底的に戦っていくつもりです。


不当逮捕され、勾留理由も明確にされないまま、国際的に悪名高い代用監獄に11日間も勾留されていた3人が、29日午後5時10分、ようやく釈放された。


捜査機関による一連の不当かつ異例の過剰反応に関しては、内外のNGOなどから数多くの抗議声明・釈放要請が出されてきた。
(グリーンピースが把握した限りでも、アムネスティ・インターナショナル、日本環境法律家連盟をはじめとする43の団体および個人から、抗議声明・意見書・釈放申入等があった)

なかでも、玩具への塩ビ使用に対して国内規制を整えているスウェーデンからは、プレスリリースも発表された。

「日本の警察がグリーンピースに対してとった行為を聞き及び、私は非常に驚いています。私は日本政府へ、スウェーデン政府は塩ビ製の子どもの玩具にフタル酸エステル類を使用することを禁じていることを通知するつもりです。そして日本政府が同様の措置をとられることを期待します」

「また、東京のスウェーデン大使館には、なぜ日本の警察が介入したのか、より詳細な情報を収集するよう要請します」
「私は、良き環境政策は、市民の自由な意見なくしてはあり得ないと確信しています」(スウェーデン環境大臣、Kjell Larsson)

さらに、28日の「見直そう! こどものおもちゃ」集会では、釈放要求の緊急アピールが全会一致で採択された。(日本玩具協会からも参加)


一方、グリーンピース事務局長の志田早苗に対する事情聴取は今もなお続行されており、事務所の不当な家宅捜索で押収された書類等も返却されていない。
市民運動への捜査当局の介入・不当弾圧という点では、今もなお問題は終わっていない。
今後、グリーンピース・ジャパンは広く市民活動と連帯して警察の不当介入を検証し、キャンペーン活動を通じて市民による環境政策の実現をめざしたいと考えている。


[関連リリースなど]

3月18日:東京おもちゃショーで脱塩ビをアピール。有明ビッグサイトの屋上から大横断幕。「大好き・おもちゃ。やめよう! 塩ビ」
[画像:有明ビッグサイトの大横断幕]

3月18日:おもちゃショーでの抗議行動は、玩具メーカーに対し塩ビを使わないことを主張した正当な言論行為。警察による逮捕は不当、即刻解放されるべき。

3月20日:「子どもに安全なおもちゃを!!」アピールに対し、捜査機関は不当に身柄拘束を継続。
[添付資料:グリーンピースがこれまでに各国で行った、おもちゃの脱塩化ビニルを求めるアピール行動と警察の対応]

3月23日:グリーンピースのボランティア3人の釈放要求について、緊急のお願い。
[添付資料:釈放要求先一覧]

3月23日:不当逮捕・拘留と、不当な家宅捜索に対する抗議声明

3月24日:即時釈放を求め、世界20ケ国の日本大使館で抗議行動

3月24日:緊急ボランティアご協力のお願い

3月25日:「勾留理由開示請求の公判」直後の、司法記者クラブでの会見

3月29日:ボランティア3人、本日釈放。グリーンピース、「日本での市民運動への不当介入問題はまだ終わっていない」