欧州連合の科学委員会は11月30日、グリーンピースが警告してきた軟質塩化ビニル玩具が幼い子供の健康に対して呈する有害性(発がんの可能性を含む)を、あらためて確認した。

これに続いて米国の消費材安全委員会(CPSC:Consumer Product Safety Commission)は、科学的な作業はさらになされる一方で、予防原則の立場からCPSC担当者は産業界に対して軟質のガラガラや歯固めにフタル酸エステル類を添加しないよう要求した。CPSCはまた、これらの化学物質が子どもの口の中に漏出することを確認し、メーカーに、3才未満の子ども向け製品にはフタル酸エステル類の使用をやめるよう促した。

この結果を受け、グリーンピース・ジャパンは、
「すでに塩ビ製玩具の有害性に関する知見は出され、各国政府も次々と規制措置をとるという迅速な判断をしている」
「もはや、試験の結果が出るまで行動を先延ばしすべき時ではない」として、
本日厚生省、通産省へ軟質塩ビの乳幼児向け玩具への使用を即時禁止するよう申し入れた。[申入書]
フタル酸エステル類は肝臓や腎臓障害を起こす可能性があり、発がんの恐れもある。また、鉛やカドミウムなどの重金属も塩ビ製玩具に含まれている。

11月27日に採択された欧州連合科学委員会の意見書について

軟質塩ビ玩具に関する主要な最近の知見(軟質塩ビ玩具の危険性は問題ではないとしたオランダのコンセンサス部会の報告も含め)を審査した後、科学委員会(CSTEE)は、軟質塩ビ玩具から漏出する化学可塑剤(DINPとDEHP)は安全レベルを超過しており、懸念に値するとの結論に達したもの。

今回、科学委員会はフタル酸エステル類と肝臓、腎臓への悪影響や、フタル酸エステル類の一つであるDEHPと精巣がんとを関連付けた。科学者の懸念は、DINPとDEHPを含有するすべての軟質塩ビ玩具と子供用品に関するものであり、歯固めのような製品に限ったものではない。

去る7月、科学委員会の最初の総合意見書に基づきながら、欧州連合の消費者保護委員会は一票差で、加盟国に対して軟質塩ビ玩具の危険性から子供を保護するための勧告を出すことができなかった。が、このことは、オーストリア、デンマーク、スウェーデンといった加盟国が国内で禁止措置をとる引き金となった。

12月2日に出された米国CPSCの発表について

CPSCは子どもの向け塩ビ玩具に使用されているフタル酸エステル類のDINPに関する調査報告を発表した。
この調査は子ども向けの製品に含まれるフタル酸エステル類について今日までのところ最も総合的に評価をしたものである。科学的な作業はさらになされる一方で、予防原則の立場からCPSC担当者は産業界に対して軟質のガラガラや歯固めにフタル酸エステル類を添加しないよう要求している。

米国ではすでに90%のメーカーが、軟らかい歯固めやがらがらからすでに取り除いているか、あるいは99年早々からの実施を示唆している。さらに、主要な小売店も、改良された商品が入手できるようになるまで、フタル酸エステル類を含む歯固めやガラガラを店頭から引き上げている。
米国内で歯固めとガラガラにフタル酸エステルを使用しないメーカーと小売店
メーカー:
キッコ(Chicco)、リトル・タイクス(Little Tikes)、ディズニー(Disney)、マテル(Mattel [Fisher-Price ARCOTOYS, Tyco Preschool])、Evenflo、セーフティー・ファースト(Safty 1st)、Sassy, ガーバー(Gerber)、Shelcore Toys、ハズブロー(Hasbro (incl. Playskool) Warner Brothers Studio Stores)

小売店:
トイザラス(Toys-R-Us)、ウォールマート(Walmart)、シアーズ(Sears)、ターゲット(Target)、K-Martケーマート

この他すでに、カナダでもカナダ保健省が11月16日に出した助言に従って、塩ビ製の歯固めやガラガラは店から引き上げられた。この助言は保護者や託児施設などに対しても直ちにこれらの玩具を処分するよう求めるものであった。11月27日には、メキシコの保健省が、試験による情報収集を続ける一方で、軟質塩ビ玩具の輸入を止め、それらの製品を市場からも撤退させることを公約した。

すでに塩ビ玩具の問題に対応して行動をとっている玩具メーカーや小売店の例
レゴ社とブリオ社は脱塩ビのポリシーを持っている。
小児用玩具メーカーのキッコ社は3歳児未満を対象とした軟質塩ビ玩具を廃止した。
その他マテル社などのメーカーは、クリスマス後ではあるが、いくつかの塩ビ玩具におけるフタル酸エステル類使用を段階的に廃止するという限定的対策を公表した。
トイザラスは世界中で、フタル酸エステル類を含有する直接にいれる玩具の引き上げを11月18日に完了した。

子供向け玩具への塩ビ使用の即時廃止を求める要請書

厚生大臣、宮下創平殿
1998年12月3日

グリーンピース・ジャパンは、軟質塩ビ製の玩具に含まれている有害なフタル酸エステル類が子どもの健康に悪影響を及ぼすことを警告し、今年2月26日、軟質塩ビ製の乳幼児向け玩具の使用廃止を求める申入書を厚生大臣あてに提出致しました。

その後今日までには、オーストリア、デンマーク、スウェーデン政府の国内の法的規制が決定し、また、カナダでも保健省の助言に従って、塩ビ製の歯固めやガラガラは店頭から引き上げられています。この助言は保護者や託児施設などに対しても直ちにこれらの玩具を処分するよう求めるものでした。
さらにメキシコでも、試験による情報収集を続ける一方で、軟質塩ビ玩具の輸入を止め、それらの製品を市場からも撤退させることを保健省が公約しています。
また、すでに国内でも安全を重視する予防原則的な観点から子供向けの軟質塩ビ玩具を引き上げている小売店も増えております。

しかしながらその間も、国内政府機関からはフタル酸エステル類を含有する乳幼児向けの商品の製造や販売に関する制限などの迅速な対応は何ら出されず、乳幼児は軟質塩ビ玩具に含まれる有害物質の危険にさらされています。

このたび、欧州連合の科学委員会は、グリーンピースの警告してきた、軟質塩ビ玩具が幼い子供の健康に対して呈する有害性(発がんの可能性を含む)をあらためて確認しました(11月30日)。
これに続いて米国の消費者製品安全委員会(CPSC:Consumer Product Safety Commission)も、科学的な作業を続ける一方で、予防原則の立場からCPSC担当者は産業界に対して軟質のガラガラや歯固めへフタル酸エステル類を添加しないよう要求しています(12月2日)。CPSCはまた、これらの化学物質が子どもの口の中に漏出しうることを確認し、メーカーに、3才未満の子ども向け製品にはフタル酸エステル類の使用を止めるよう促しています。

このように、重要な知見や政府機関の判断、対策はすでに相次いで出されております。厚生省や通産省内でも調査が進められていることを伺ってはおりますが、そうした調査が終了するまで国内の対策をもはや先延ばしにすべきではありません。
つきましては、子ども用玩具への軟質塩ビの使用を即時廃止するべく規制措置をとることを要請致します。

以上

グリーンピース・ジャパン
事務局長、志田早苗