グリーンピース・ジャパンは、おもちゃキャンペーンの一環として、6月1日(一部2日)大手百貨店13社、大手量販店9社に対し、塩ビ玩具の取扱状況や、玩具等の乳幼児向けの製品の安全性に対する姿勢などを問う公開質問を行った。
このうち百貨店では、伊勢丹、近鉄百貨店、西武百貨店、そごう、高島屋、大丸、名古屋三越、阪急百貨店、松坂屋、丸井、丸井今井、三越の12社、量販店ではイズミヤ、イトーヨーカ堂、西友、ダイエー、長崎屋、マルエツ、マイカル、ユニーの8社から回答を得た。
以下は集計の概要とまとめである。

* 具体的回答については、「塩化ビニル製玩具などに関する百貨店・量販店に対する公開質問の回答結果まとめ」をご覧ください。


1. 概要

●塩ビ玩具の取り扱い状況:
塩ビ玩具全般ではすべての会社が、取り扱っていると回答。
3歳児以下を対象とした玩具の販売については、一社を除きすべてが、販売していると回答し、西武百貨店のみが、販売していないと回答した。
また、歯固めについては販売を中止(自粛)していると回答した社は4社あった(伊勢丹、近鉄百貨店、イトーヨーカ堂、長崎屋)。

●材質表示の無い玩具への対応:
11社が、調べて把握していると回答した。
普段から売り場で消費者に説明できるようにしているところは2社(丸井今井・イズミヤ)であった。

●塩ビ玩具の今後の取扱の予定:
2社が取扱中止時期を含めて回答している。
西友:3歳時未満の乳幼児向けについて1998年7月頃には販売をやめる予定。
ユニー:6ヶ月~1才を中心に、特に口に含む可能性のあるものは98年度中の切り替えをしたい。
この他にも、低年齢向けを中心に切り替えを検討中のところや、メーカーへ働きかけを行っているところがある。
尚、今後も引き続き販売していくと回答したのは1社であった。

●玩具等乳幼児向けの製品の安全性に対する姿勢
(主なものを抜粋):
阪急百貨店、西友:基本的には、有害性が疑われている物は安全性が確認されるまで使用や環境への放出は控えるべきと考える。
イトーヨーカ堂:塩ビ製品を排除するようメーカーに強力に働きかけをしている。
ユニー:「疑いが強い」という客観的判断ができれば極力取扱を止めていきたい。


2. まとめ

欧州では昨年前半から、小売店が塩ビ玩具の販売を自粛する動きがおきている。またオーストリアではすでに、3歳児未満の乳幼児を対象とした玩具で口に入れる可能性のある物については、可塑剤の添加されたものの販売を禁じるよう、省令を改正している。
乳幼児向けの玩具に対して日本では今年4月に、主に木製の輸入玩具を取り扱っているグランパパが、今後塩ビ玩具を取り扱わない方針をグリーンピース・ジャパンに対して表明している。

このたびの公開質問は、より多くの種類の玩具、またその他の日用品などを扱う小売店の塩ビ玩具の取扱状況や環境・健康への基本姿勢を調査することを目的とした。
公開質問の結果から特筆すべきことは、小売店の中で環境意識、子供向け商品への安全意識の高い企業、また具体的に行動を取り始めている主旨の回答のあった企業が多いことである。大半の回答には、提供する商品の安全性の確保を優先する姿勢が現れている。

また、玩具には材質の表示のないものが多いという問題があるが、何らかの対応をしている主旨の回答をした企業が半数にのぼることから、素材に対する意識は高くなっているものと思われる。

具体的な行動として、乳幼児用塩化ビニル玩具の切り替えなどに明確な方針を出していない企業は、実際に売り場でどの程度消費者の懸念に応えられるかが、今後試されることになる。消費者の立場から、環境や子供の健康に対する市民の懸念を表明していくことが必要である。
また、乳幼児向けの塩ビ玩具の取扱停止あるいはその予定を表明している企業についても、それが本当に実行に移されているかどうか、市民が今後厳しく注視していく必要がある。

玩具の安全性に関して、扱っている玩具が「STマーク* がついている」、あるいは「食品衛生法をクリアーしている」ことを挙げているところがあるが、STマークの基準は軟質玩具に含まれるフタル酸エステル類を対象としていない。

*STマーク:(社)日本玩具協会が設けている玩具安全基準に合格した玩具につけられているマーク


しかしながら、フタル酸エステル類はすでに食品用のラップには使用されなくなっている。さらに、日本ではフタル酸エステル類の耐容一日摂取量の設定さえなされていないなど、法律による規制自体が遅れていることを認識しておく必要がある。

より良い商品を提供することと、環境や健康に対してより負荷のないものを提供することとは矛盾しない。このことを、企業は一早く認識し行動に活かすことが必要である。
今回の回答結果は、市民が訪れることも多い有名小売店を中心に行っているが、これらの企業が今後、市民に対して公にした姿勢を守り、あるいは改善するよう、市民の声を喚起していきたい。