電気事業連合会が高レベル放射性廃棄物の輸送船が21日にフランスを出港し、輸送船は「パシフィック・スワン」であることを公表したことについて、グリーンピース・ジャパンは「たった二日前の出港日発表は無意味で無責任」であると激しく非難している。

スワンは老朽船

現地時間1月18日の午前4時から5時の間に3体のキャスク(容器)に入った高レベル放射性廃棄物がラ・アーグの再処理工場からシェルブール港へ移送された。パシフィック・スワンは1月19日にシェルブールに到着、廃棄物の積み込み始める。出港は1月21日で、その1日後に輸送ルートが公表されるが、グリーンピースが入手したフランス政府の内部メモによれば「パナマ航路」だという。

1996年、「スワン」のバーロウ・イン・ファーネスで係留されたままの「スワン」を目撃しているグリーンピース・ジャパンの竹村英明によれば、「スワン」は1979年に建造された古ぼけた船で、実際1993年末以来、1997年末まで係留されたままだった(ロイズ・シップインデックスより)。
その後1997年の9月に短期間、母港を離れていたのでその期間に整備をしたと思われる1990年7月11にはパナマ運河より移動中、カリブ海でエンジン室で火事を起している。

現在まで、1月2日にドミニカ共和国が、1月15日にヴァージン諸島が反対声明を出している。また、カリブ海・太平洋地域選出の米国国会議員はクリントン大統領に輸送の中止を求めている。


国際法上も問題のある高レベル放射性廃棄物の輸送

パナマ航路が使用されれば、カリブ海諸国の間を縫うように航行していくことになるが(地方紙参照)すでにドミニカ共和国とヴァージン諸島から輸送に対する反対声明がでている。また、各国から「輸送船の自国の海域の航行を防ぐにはどうしたらよいのか」などの声があがっている。

一般に国際法(例えば海洋法)では、船舶の無害通行権が保証されている。高レベル放射性廃棄物輸送船は、これを楯に輸送ルートの周辺各国に無通告で通航している。 しかし、国連海洋法条約の第19条にあるように「通航は沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り」無害とされるのであって、「安全を害す」可能性のある高レベル放射性廃棄物輸送船には無害通航権が保証されるかどうかは、議論の余地がある。
また、第22条では、沿岸国は「船舶の航行規則のために沿岸国が指定する航路帯及び設定する分離通航方式を使用するよう」要求できるとしており、「核物質又は他の本質的に危険もしくは有害な物質もしくは原料を運搬する船舶」はその航路帯のみを通航するよう要求できることになっているのだが、輸送の計画段階での沿岸国への通知がなければ、対応ができない。核廃棄物船の事前通告に関しては国際海事機構(IMO)の会議の場で「必要である」と話しあわれている最中である。