国際環境保護団体グリーンピースは、本日「塩素化合物の焼却とダイオキシン」を世界で同時に発表。1995年の発表以来、塩素と塩化ビニールを規制する各国政府の議論に幅広く影響を与えてきた、米国機械工学会(ASME)の科学的な報告書には全く信頼性がない、と指摘した。このASMEの報告書は、塩化ビニルとその中間製品の製造企業を代表する業界団体ビニル協会が資金提供し、グレゴリー・リゴ博士(リゴ&リゴ・アソシエーツ代表)が作成したもの(以下リゴ報告書)である。

リゴ報告書では、ごみ焼却炉から排出されるダイオキシン量と塩化ビニルのような塩素系物質の焼却には、ほとんどあるいはまったく因果関係がない、と述べている。しかし、約半年間にわたる詳細なグリーンピースの検証によれば、塩素の投入と焼却炉の煙突からのダイオキシン排出とは、リゴ報告書の結論と比べて、驚くほど密接な関連性があることが明らかになった。

[塩素化合物の焼却とダイオキシン]を発表したグリーンピース・インターナショナル科学部門のパット・コスナーは、
「リゴ報告書が発表された時、その結論はほかの科学的な結論と反していた。 なぜそうだったのかが、今ようやくわかった。重要な検討会などに影響を与え、数多く引用されてきたこの報告書への私達の検証は、報告書作成に用いられたデータや方法論、報告結果の信憑性などに、深刻な問題を投げかけている」と述べた。

リゴ報告書は、米国、スペイン、スウェーデン、オーストラリア、地中海沿岸国など多くの国々で、塩化ビニルの使用と処分についての議論に影響を及ぼしてきた。また、ダイオキシンなど残留性有機汚染物質(POPs)を排除・削減する方法についての重要な政府間の国際会合でも、言及されてきた。

ダイオキシンとそのほかの有害化学物質は、塩化ビニルの生産段階と廃棄の焼却中に、環境中に放出される。ダイオキシンは、発ガン性があり、生殖系への異常(精子数の減少や子宮内膜症等)神経系の発達の阻害、免疫系の障害など身体に深刻な影響を及ぼすことがわかってきている。

リゴ報告書は、当時塩化ビニルの規制を厳しくしようとしていた米国環境保護庁(EPA)の方針を変えるために、米国のビニルおよび化学業界が委託したものであった。これは、グリーンピースが入手した業界内部メモから、証拠付けることができた。
そのメモには、報告書の作成者であるリゴ博士は「業界に同情的」かつ「業界の必要性を優先的に置く」、と記されている。

グリーンピースは、ASMEに対し、リゴ報告書の結論について調査するとともに、新たな報告書を作成するよう要請している。さらに、各国政府に対し、この調査結果が明らかになるまで、リゴ報告書を一切利用しないよう、呼びかけている。


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