本日、厚生省は全国の都市ごみ焼却施設1,854基のうち1,150基の排ガス中のダイオキシン類濃度を各施設名とともに発表した。
同省は今年1月に発表した「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」の中で、緊急対策を必要とする炉のダイオキシン濃度の基準を80ng/m3以上としている。この基準自体が異様に緩いものであるが、それでもこの基準を超える施設は72件にのぼった。
厚生省の国内的な責任、対策上の問題、そして国際的な観点から、グリーンピース・ジャパンは以下のようにコメントを発表した。

1)厚生省の責任の重大さ—直ちに閉鎖を

この、発表された全国の約三分の二の施設の排煙中ダイオキシン量を見る限りでも、その排出量の多さは極めて深刻である。これらの施設を今まで何年もの間放置してきた厚生省の責任は重大であり、また、これだけの危険を近隣に抱えてきた市民に対して、これらの情報を提供してこなかったことは犯罪的でさえある。
人の健康と環境を本当に守ろうとするならば、これらの焼却炉は直ちに閉鎖すべきである。

2)高すぎる基準値が問題である:問題のあるのは72施設のみではない

80ngという数値は、そもそも10pg/kg/dayという厚生省の高すぎるTDI(耐容一日摂取量)を元に算出されたものである。
2月のWHO国際がん研究センター(IARC)によりダイオキシンが「人に対して発がん性がある」(クラス1)と言明されたことにより、10pgという数値そのものが見直しを迫られている今日、それに基づく80ngという数値自体も評価し直さなければならない。
80ng/m3という緊急対策の基準線設定は世界的にみても驚異的に高い。基準が発表されたとき、オーストリアのグリーンピースからは80pgの誤りではないかとの確認が入ったほどである。
* pg(ピコグラム)はng(ナノグラム)の1,000分の1

3.燃焼管理による対策には限界がある

旧ガイドライン適用炉でさえダイオキシンの排煙中濃度が80ngを超過しているということは、燃焼管理や排煙処理だけではダイオキシンの削減は困難であることを示している。
また、排煙が主に注目されているが、飛灰、残灰、集塵器のダイオキシンも見過ごすことは許されない。
それらを総体的に無くしていくためには、焼却炉に投入されるごみの量の削減と質を改めること、塩化ビニルなどの塩素系の廃棄物を無くしていくという措置が緊急に必要である。

4)日本国内だけの問題ではない、国際的問題である

環境中に出されたダイオキシンは、地球規模の凝縮(global distillation)という働きにより、高緯度地域に沈着する傾向がある。これにより、たとえばカナダのイヌイットなどの間では極めて高濃度のダイオキシン類が検出されている。
80ng算出要因のひとつである拡散倍率の妥当性も、市民、研究者から批判されている。が、「拡散すればいい」という考え方そのものと、焼却炉のみでさえこれだけ大量のダイオキシンの排出が続けられているという事実を考え合わせれば、世界的な汚染に大いに加担しているという点で、日本の責任は更に重大である。