グリーンピース・ジャパンはダイオキシン発生ゼロを求めるキャンペーンの一環として、有機塩素化合物を使用する工場からの廃水、廃棄物、沈殿物サンプルを分析し、その結果、高濃度のダイオキシンを検出した。

ダイオキシン発生源といえば焼却炉に焦点が当たりがちであるが、実際には塩素を使用する様々の過程でダイオキシンは発生している。
しかし、環境庁の発生源調査はいまだに具体性がなく、発生源の特定、発生量なども把握されていない。また塩素使用に対する危機感もなく、対応の遅れがダイオキシン汚染の進行を許してしまっている。

こうした現状を危惧し、グリーンピースはダイオキシン発生源のひとつとして、有機塩素化合物を使用するアルミ工場から排出される液体・固体廃棄物、沈殿物を調査・分析し、その結果、ダイオキシンを14.66 I-TEQμg/kg(沈殿物サンプルからの合計)という極めて高い値で検出した。

また、あわせて行ったその他の有機化合物と重金属の分析から、プロセスに使用される塩素化合物6塩化エタン(ヘキサクロロエタン、HCE)自体や、それに由来するヘキサクロロベンゼン(HCB)やヘキサクロロブタジエン(HCBD)などがやはり高い値で検出された。
これらの有機塩素化合物は毒性、残留性が高く環境中に蓄積し、生物の体に濃縮されていくといった有害性をもつ物質群である。

グリーンピースが行った関係者からのインタビューによれば、作業中に発生する恐れのある有害物質に関する情報など現場の環境に対する作業者への事前の警告は行われておらず、また、ダイオキシンの生成などの情報も一切提供されていないことが分かった。工場で塩素化合物を使用するガス抜き作業を行ったあとめまいがしたり、気分が悪くなったりしたこともあるという。
作業者は、廃棄物の処理装置を完備し、そして塩素系の薬品の使用を止めてほしいと訴え、自分の将来、そして子孫に出る影響に対して大変心配していた。

国内ではガス抜きに塩素ガスを使用しているところもあるが、塩素ガスもやはり、ガス抜きプロセスにおいて副産物としてのダイオキシンその他の有機塩素を発生させる恐れがあり、HCEの代替には決してなり得ない。
ヨーロッパ諸国では塩素系以外の、窒素など不活性ガスを使用する代替が進んでいる。日本でも塩素系物質使用の早急な廃止が必要であり、かつそれは可能なはずである。

今回のグリーンピースの調査は、ダイオキシンの多様な発生源に対する緊急の警告を発するものである。
日本ではいまだに総合的な調査がなされていないが、海外では発生源調査が進んでいる。また、グリーンピースが昨年行った世論調査によれば、市民が政府にもとめるダイオキシン対策の筆頭には発生源調査が挙がった。
ダイオキシン類を含む残留性有機汚染物質の国際規制に関して、その段階的撤廃を目指す条約議定書の策定のため、世界は1998年早々に正式な交渉を開始する(1997年2月7日、UNEPにて合意)。日本政府が国内・国際的に負う責任は大きい。

現在環境庁はダイオキシンの抑制対策を検討中であるが、発生源の早急かつ徹底した調査を行い、根本からダイオキシン発生を絶つための厳しい対策を取るべきである。