環境保護団体グリーンピース・ジャパンは11月1日、霞ヶ関のダイヤモンドホールで、日本企業を対象としたセミナー[地球温暖化で動きだした欧米のビジネス]を開催した。グリーンピースは8年にわたる地球温暖化抑制の国際的キャンペーンの中で、特に保険・金融産業を対象にした企業向けセミナーをロンドンやニューヨークで行ってきたが、日本でのセミナーは今回が初めて。

セミナーでは、グリーンピース・インターナショナルから、気候変動政策部長のビル・ヘアーとソーラー・プロジェクト部長のジェレミー・レゲットが来日し、ヘアーが[CO2 排出規制に関する国際交渉の政治分析と見通し]、レゲットが[地球温暖化問題に対応する欧米の産業界の事例紹介]と題し講演を行なった。

出席者は上場企業の役職者を中心に、保険・銀行12名、電気・電機13名、建設13名、化学・石油12名、鉄鋼・重工業関連7名、政府・経済団体関連10名など、合計112名が参加者した。

このセミナーの目的は、来年京都で開催される気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)までの今後12カ月間に行われる二酸化炭素およびその他の温室効果ガスの排出削減交渉において、日本政府のポジションに大きな影響力を持ち、かつ途上国を含む国際市場に、技術・投資力などあらゆる点で重要な影響力を及ぼす日本企業に対し、この問題の政治動向と欧米のビジネス動向に関する最新の情報提供を行なうことにある。

今年7月ジュネーブで開かれたCOP2で、日米、欧州連合を含む134カ国の大臣が法的拘束力をもつ「(全体として)相当の」削減をCOP3で採択することを求める閣僚宣言に署名した。これによって、二酸化炭素およびその他の温室効果ガスの法的拘束力をもつ排出削減目標(議定書)の採択に向けて政府間交渉は大きく動きだした。

* AGBM:AGBM(ベルリン・マンデイト特別会合)とは、ベルリン・マンデイトに基づいて議定書の内容などについて交渉を行う特別会合を指す。ベルリン・マンデイトとは、1995年4月の条約第1回締約国会議における決議。2000年以降の対策を定める議定書またはその他の法的文書を1997年の第3回締約国会議で採択することを目指して、アドホック・グループを設置し議論を行なうこととした。
今後12カ月間、国連の委員会(AGBM*)のもとで、議定書交渉が行われる。今年12月の交渉会議(AGBM5:ジュネーブ)では、いよいよ議定書の具体的な内容の交渉に入る見通しである。

COP3の主催国である日本が法的拘束力のある排出削減議定書採択への主導的な役割を果たすには、国内の産業界のこの問題の重要性の認識と削減の合意が不可欠である。
今回のセミナーでは、日本企業への働きかけの第一段階として、国際交渉の動向を踏まえ、地球温暖化問題にどう対応していくことが日本のビジネスにとって最適なことかを産業界自身が検討し、判断するための材料提供を目指した。

セミナーに先立って行われた記者会見で、ビル・ヘアーは、
「今後12カ月にわたる交渉は、これまで行われた環境問題の交渉の中で最も重要なものだ。そして、最も難しい交渉になる可能性が高い。主催国として、日本はこの交渉を成功させる重い責任を担っており、交渉が成功するには、日本の産業界の役割が極めて重要だ。
対策をとるべきか否かを議論する時期はすでに終わった。今、日本の産業界が考えるべき本当の問題は、地球温暖化に対し、どのくらいの規模で、どれくらい速く対応できるかだ」 と述べた。
ジェレミー・レゲットは産業界に対し、
「欧州の保険業界は、地球温暖化の脅威に注目しはじめている。 クリーンエネルギーなどの産業は、この問題によって利益を得ることができる部門だ。
すでにエネルギー部門の主導的立場の人々から、何年か先に巨大なソーラー・エネルギー市場が必ず出現するという発言が出始めている。世界の産業界にとって、地球温暖化は脅威であると同時に明らかなビジネスチャンスだ。
大ビジネス革命が起こることは間違いない。問題は、どの企業がその先頭に立つかだ」と述べた。
グリーンピースは来年のCOP3に向けて、法的拘束力をもった二酸化炭素排出量の20%削減が京都で採択されるよう、このセミナーを皮切りに、日本を中心とした国際的キャンペーンを強化していく計画である。

今回の来日で、ビル・ヘアーは環境庁(長官他)、通産省、外務省の実務担当者と面会し、率直な意見交換を行なった。ジェレミー・レゲットは来週、保険業界やNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)と面会予定。