グリーンピースの調査隊が撮影したガラパゴスのゾウガメ

3月末、高気圧の影響で、太平洋側を中心に気温が上がり、東京都では28.1℃を観測、3月の史上最高記録が更新されました。気象庁によると、3月31日には、全国の70の観測地点で3月の最高気温を記録したということです。今後、これまでの気候の最高記録が幾度も塗り変えられるでしょう。しかし、この悪循環は必ず止めることができるものです。良い連鎖を始めるためのたくさんの歩み、3月の環境ニュースをお届けします。

▼この記事を読むとわかること

> エクアドル:ガラパゴスの公海保護区を呼びかけ
> 日本:神奈川県の「地球温暖化対策実行計画」にパブコメの成果
> イギリス :断熱のない家を原因とする健康被害を指摘
> グローバル:女性史月間に育つオルタナティブマップをつくる
> 「オルタナティブ」って何だろう

エクアドル:ガラパゴスの公海保護区を呼びかけ

3月11日、グリーンピースはエクアドルのガラパゴス諸島周辺のより広い範囲に、国際海洋条約に基づいて公海海洋保護区を設置するよう求めました。グリーンピースはウミガメ、シュモクザメ、アシカ、ウミイグアナといった約3,000種の海洋生物が生息するガラパゴス諸島で科学調査を行い、保護区内の素晴らしい生態系を確認。同時にガラパゴスの保護区外で、プラスチック汚染や大規模漁業による乱獲が生態系に影響を与えていることを報告しました。

ガラパゴス保護区内を泳ぐ魚の大群
ガラパゴス保護区内を泳ぐ魚の大群(2024年2月)

約1年前に合意された国際海洋条約は、これまでに約84カ国が署名しています。ただ、法律として効力を発揮するためには、少なくとも60カ国がこの条約に批准する必要があります。現在のところ、国際海洋条約にすでに批准しているのはチリとパラオだけです*

ガラパゴス周辺にもっと広い海洋保護区をつくり、それを新しい条約に基づいて創設された最初の海洋保護区にすることができれば、地球上の海洋保護の最も素晴らしい例として、この上ないスタートを切ることができるはずです。

日本:神奈川県の「地球温暖化対策実行計画」にパブコメの成果

3月28日に、神奈川県がパブリックコメント(以下パブコメ)*の募集を経て、改定した「神奈川県地球温暖化対策計画*」を公表。課題は残るものの、新築住宅等への太陽光発電設備設置義務化について、大きな前進といえる変更がありました。素案段階では「先行自治体における実施状況等を踏まえ、設置義務化の必要性や効果等について検討」となっていたところが、最終的には「国内外の実施状況を踏まえて検討」に修正されました。

*行政機関が政令や省令等を定めるために、前もって一般市民から意見を募り、その意見を考慮して、行政運営の公正さを確保し透明性の向上を図る。

日本の家屋の屋根に置かれたソーラーパネル

グリーンピースに事務局をおく「ゼロエミッションを実現する会(以下ゼロエミ)」は、パブコメの呼びかけをはじめ、太陽光義務化の検討を早めてもらうためさまざまな働きかけを行いました。太陽光義務化における「先行自治体」は東京都と川崎市で、実施は2025年から。その後からの検討となると遅くなってしまいます。その点、国内外の実施状況を踏まえての検討なら、数多くの欧米の自治体の義務化事例を参照することができます。太陽光義務化のスピードアップに直接繋がる意義の大きな修正となりました。

今回集まったパブコメの数は前回の10倍の858件*、最終的に38件もの意見が反映されました。ゼロエミのチームが2週間に渡り、連日「パブコメを書く会」を開催したことなどが大きく貢献しました。パブコメ提出に協力してくださったみなさん、ありがとうございました。この前進を一緒にお祝いしましょう。

イギリス :断熱のない家を原因とする健康被害を指摘

グリーンピースUKは、歴代政権が断熱予算を削減したため、毎年数千人が亡くなっているというレポートを発表しました。2013年に、当時のデイヴィッド・キャメロン政権が住宅断熱への支援の削減を決定して以来、家の中の寒さによって毎日約58人が命を落としているとするものです*

グリーンピースのアクティビストたちが、英国議会前を家の寒さのせいで亡くなった人々の墓地に変えた
グリーンピースのアクティビストたちが、英国議会前を家の寒さのせいで亡くなった人々の墓地に変え、政府に対して住宅断熱への支援削減が人々の命を奪っていると警告した(2024年3月)

グリーンピースUKの指摘によると、断熱への補助金が削減された結果、断熱工事の件数は2012年の230万件から2013年には30万件強に激減したといいます*

家の中の寒暖差による健康被害は恐ろしいものです。日本の家の断熱性はイギリスのそれよりも優れているとはいえません。断熱性の高い家は石油やガスの需要を減らし、光熱費を下げるばかりでなく、私たちの命と健康を守ります。

グローバル:女性史月間に育つオルタナティブマップをつくる

120年前の3月8日、アメリカの女性労働者たちが参政権を求めて大きなデモを行いました。これを起源に、1975年に国連が8日を国際女性デーとして制定し、3月を「女性史月間(Women’s History Month)」に定めました。

タイ南部ソンクラー県のチャナ郡にある沿岸コミュニティーの女性漁師
タイ南部ソンクラー県のチャナ郡にある沿岸コミュニティーの女性漁師(2023年6月)

各国のグリーンピースが公開しているさまざまな女性の物語**をみてもわかるように、今、世界各国で女性やマイノリティとされてきた人々が、現在の経済成長を指針とした少数の人間の利益を重視するシステムの代わりに、大多数の人々にとっての幸せを考える持続可能なオルタナティブ(代替え的)な仕組みを築いています。

利益や成長よりも、人と地球を優先する身近で新しい仕組みを個人が加えることで変化する “Growing the Alternatives Map(育つ代替え案マップ)が公開されました。

Growing the Alternatives Map(育つ代替え案マップ)

あなたが知っている公平で協力的な、環境に配慮した社会の形成に取り組んでいるコミュニティ、運動、組織などを地図に加え、地図を育てることができます。すでに存在している仕組みやアイディアに学び、勇気づけあうことが大切です。みんなで持続可能な未来を成長させましょう。

「オルタナティブ」って何だろう

辞書で「オルタナティブ」を調べると、「主流な方法に取って代わる新たなもの、代わりとなるもの」という意味が載っています。地球環境と健康で幸福な未来のために、「オルタナティブ」はすべての人間にとって鍵となる言葉です。

タイで漁師をする女性たち
タイで漁師をする女性たち。彼女らが所属するコミュニティグループの「タオ・カイ”Tao Kai”」は、地元地域の生産物、特に魚介類の成長を守り、地域経済の改善に貢献し、持続可能な漁法を用いて地域をリードすることを目的に結成された(2023年6月)

「オルタナティブ」は既存の方法を否定する言葉ではありません。地域やコミュニティに根付いた文化や、受け継がれてきた共存のための様式に学び、仕組みの問題点を改善し、より良い変化を模索する誰しもに優しい選択の可能性です。私たちのオルタナティブについて話しましょう。

グリーンピースは、より地球と人々に優しい選択について、国際的なネットワークを用いて政府や企業への提言を続けています。グリーンピースの活動を寄付というかたちでぜひ応援してください。

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