ミュンヘンで脱原発を祝うグリーンピースと市民たち。2023年4月15日。
ミュンヘンで脱原発を祝うグリーンピースと市民たち。2023年4月15日。

2023年4月15日、ドイツで最後まで運転していたイザール原発2号機、ネッカー原発2号機、エムスラント原発の3基が停止、閉鎖されました。
2011年に当時のメルケル政権が脱原発を宣言してから、実に12年がかりの実現でした。
1960年代から続いていたドイツの反原発運動のゴールを祝うグリーンピース・ドイツのメッセージと、これまでの活動のあゆみを紹介します。

▼この記事を読むとわかること

> さよなら、原発
> グリーンピースの抗議活動と調査活動
> 原子力は人間の手で制御できない
> 原発依存に逆戻りの日本

さよなら、原発

数十年にわたる抗議活動の末、ついに、ドイツは原発を廃止しました。

グリーンピース・ドイツ事務局長のローランド・ヒップが、これまでを振り返り、未来へ向けての展望を語ります。

エムスラント原発でのアクション。2023年3月。
エムスラント原発でのアクション。2023年3月。

私たちは長い間、この日に向けて努力してきました。
2023年4月15日、ドイツにおける原子力発電の歴史は幕を閉じました。

グリーンピースを含め、何百万人もの人々が、再処理工場、核廃棄物輸送、安全とはいえない核廃棄物貯蔵施設、新しい原子力発電所の建設に対して、何十年も抗議してきたのです。それが報われたのです。

脱原発は、強大な企業や政治家の既得権益に対する勝利であり、あらゆる困難に打ち勝った成功です。
私は、信念のために危険を冒したすべての勇気ある人々、すべてのデモ参加者、請願書や抗議文に署名したすべての人々に感謝します。
そして、原子力発電という危険な技術に対する抵抗において、グリーンピースが果たした役割を誇りに思います。

チョルノービリ (チェルノブイリ)や福島の大惨事以前から、この国でどれだけ大きな原発反対運動があったかは、しばしば忘れられています。
ヴァッカースドルフに計画されていた再処理工場は、何年にもわたる大規模な抗議活動の末、1989年に建設が中止され、グリーンピースと深く関わる反原発運動の最初の大きな成功例になりました。

グリーンピースの抗議活動と調査活動

ヴァッカースドルフ再処理工場でのアクション。1988年10月。
ヴァッカースドルフ再処理工場でのアクション。1988年10月。

グリーンピースは、ドイツの原発や、イギリスのセラフィールド、フランスのラ・アーグの再処理工場への核廃棄物の輸送に繰り返し抗議し、これらがとても安全とはいえないことを証明しました。

1998年のグリーンピースの測定で、セラフィールド再処理工場周辺の土壌サンプルが、チョルノービリ原発周辺の30キロの立入禁止区域のサンプルと同レベルの放射能に汚染されていることが判明しました。
ラ・アーグ再処理工場沖の北海では、2000年に放射性廃液が海に放流されたために、規制値をはるかに超える放射線量が検出されました。

2005年、イギリスとフランスの再処理工場への輸送が禁止になりました。これも、グリーンピースの事実に基づく抗議活動の成果です。

線路上でゴアレーベンへの核廃棄物輸送に抗議する人々。2010年11月。
線路上でゴアレーベンへの核廃棄物輸送に抗議する人々。2010年11月。

反原発運動の最後の大きな節目は、ゴアレーベン放射性廃棄物処分場の計画取り消しが決まったことです。 結局のところ、ここでも、政府が科学的根拠として示せるものは何もありませんでした。古い岩塩ドームは、何十万年もの間、安全に保管しなければならない放射性廃棄物の貯蔵には明らかに適していませんでした。

この成功は、同時に、原発推進派が次世代に引き継ごうとしているものに、巨大な問題があることを指し示しています。 核廃棄物の安全な処分場は、世界のどこにもひとつもないのです。
ドイツで4月16日以降、新たな核廃棄物が発生しないことも、良いことです。

原子力は人間の手で制御できない

チョルノービリや福島の事故は、この技術が災害時に人間の手では制御できないことを明確に示しています。
2011年にドイツ政府が決めた脱原発は正しい判断であり、今も変わりありません。
原子力エネルギーは高価で、リスクが高く、独立したエネルギーとはいえません。世界で取引されるウランの半分以上は、ロシア、カザフスタン、ウズベキスタンから供給されています。

原発というブレーキがなくなれば、エネルギー転換はいよいよ加速します。
私は、次の原発事故や、時代遅れの技術への誤った投資に怯えることのない、再生可能エネルギーによる安全な未来を待ち望んでいます。

今日、私は、脱原発とそれを可能にした人々を祝福します。

カザフスタン、トムスク7再処理工場近く。放射能汚染を警告する標識。1994年。
カザフスタン、トムスク7再処理工場近く。放射能汚染を警告する標識。1994年。

原発依存に逆戻りの日本

事故以来12年間、原発依存脱却をめざしてきた日本ですが、いまもって脱原発は実現できていません。
それどころか、原発の新増設や建て替え、老朽原発の再稼働も推進する、「原発を最大限活用」する政策に転換しようとしています。
実際に、運転開始から50年近くになる高浜原発1号機・2号機は今年再稼働を予定しています(6〜7月の予定が火災対策工事のため遅れる見通し)。事故のリスクが高い老朽原発を、なぜ再稼働しなくてはならないのでしょうか。

建設に膨大な時間とコストがかかり、事故になれば甚大な環境破壊と人権侵害を引き起こし、核廃棄物処理の問題すら解決できていない原発を、気候変動対策にすることはできません。
温室効果ガス削減には、省エネと、環境負荷を極力低減した再生可能エネルギーへの転換が、もっとも実効的な解決策なのです。

【署名】原発のない世界を
日本から実現したい

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