福島からの避難者を受け入れていた山形県米沢市の避難所(2011年4月)
福島からの避難者を受け入れていた山形県米沢市の避難所(2011年4月)

12年前、まだ寒かったあの日のことを覚えていますか。
随分前のことだから、もう忘れてしまったという人もいるかもしれません。

でも、事故の影響はずっと続いています。それは、グリーンピースが独自に実施してきた調査から導き出された、紛れもない事実です。

多くの方々のご協力に支えられてきたこの12年の活動を振り返ります。いっしょに、思い出してみませんか。

▼この記事を読むとわかること

> 12年前のあの日
> 40回以上に及ぶ放射能調査
> 原発をめぐるあらゆる検証
> 半世紀にわたって続けてきた脱原発活動
> 未来のためにできること

12年前のあの日

2011年3月11日14時46分、宮城県沖を震源とするマグニチュード9の地震が発生しました。

それから間もなく、青森県から千葉県をはじめとする東日本各地の太平洋沿岸に10メートル級の大津波が押し寄せ、合計561平方キロメートルもの地域が浸水。津波は河川を最大49キロメートル遡上、海沿いだけでなく内陸にまで被害が及んだのです。

1万5,900人が亡くなり、2,523人が行方不明に(警察庁・2022年2月現在)、最大時で47万人の人々が避難を余儀なくされました。

東京電力福島第一原発(2011年3月16日)
東京電力福島第一原発(2011年3月16日)

震度6強の地震に襲われた東京電力福島第一原発は停電し、外部電源を失い、津波で非常用電源が損壊、全電源を喪失。

これにより核燃料を冷却できなくなって炉心溶融が始まり、1、3、4号機で水素爆発が発生するなどして、大量の放射性物質が原発施設の外に放出されました。

この大災害と事故の影響で、2012年までに16万人が避難。いまも3万人以上が、もとの生活を取り戻すことができないまま、避難生活を続けています。

40回以上に及ぶ放射能調査

グリーンピースが福島で放射能調査を始めたのは2011年3月26日。

事故当時、原発の風下にあたっていた北西部の6地点で空間線量を計測した結果、高レベルの放射線量が検知され、科学的データに基づいた避難地域設定と、子どもと妊婦の優先避難、さらに地域住民への情報・支援提供を政府に求めました。

福島県浪江町での放射能調査(2011年3月26日)
福島県浪江町での放射能調査(2011年3月26日)

以来、定期的な空間線量の計測に加え、土壌や堆積物、海産物や加工食品などの調査を続けてきました。同時に、事故の影響を受けている人々や労働者の人権問題、原発の安全性に関わる分析を数々手がけ、国内だけでなく、国際社会へも情報を発信しています。

2012年以降の主な成果

福島県浪江町、独自に開発した超軽量放射線測定器を搭載したドローンによる放射能調査(2018年10月)
福島県浪江町、独自に開発した超軽量放射線測定器を搭載したドローンによる放射能調査(2018年10月)

原発をめぐるあらゆる検証

グリーンピースは放射能調査だけでなく、原発にどれだけのリスクがあるのか、さまざまな視点から追求し、世界に向けて発信してきました。

グリーンピースの報告書(一部)
グリーンピースの報告書(一部)

2012年:福島第一原発事故の教訓
事故のきっかけは地震と津波だが、原因は原子力行政と産業主導型規制の制度的欠陥、つまり人災であることを指摘。

2012年:原発 – 21世紀の不良資産 原子力への投資と東京電力福島第一原発事故
福島第一原発を所有する東京電力はどこから融資をうけていたか、金融アナリストや格付け機関は何を見逃していたかなど、原発に対する金融業界の責任を論じた。

2015年:川内原発と火山灰のリスク
原子力規制委員会の定めた「原子力発電所の火山影響評価ガイド」が、国際原子力機関(IAEA)のガイドラインを満たしていないこと、九州電力が川内原発1、2号機の再稼働審査にあたって噴火の影響を過小評価していることを明らかに。

2016年:日本の原子炉に導入された一次冷却系部材、炭素異常に関するレビュー(第一部)
日本の原子炉の一次冷却系部材、炭素異常に関するレビュー 最終第二部及び三部
フランスの原発で蒸気発生器や原子炉圧力容器の鋼材から基準値を超える炭素濃度が発見されたことをきっかけに、世界中の原発に使用されている日本製の部材の欠陥を指摘。

2017年:格差ある被害 原発事故と女性・子ども
日本の文化的・社会的・経済的な状況を背景とし、特に弱い立場に置かれる女性や子どもに東京電力福島第一原発事故が与えた影響について、既存の研究からの視点と理論を紹介。

2020年:東電福島原発汚染水の危機2020
海洋放出計画が進行中の汚染水問題について、政府や東電が世界中に説明すべき重大なリスクを指摘。

2021年:福島第一原子力発電所の廃炉計画に対する検証と提案
現在の東京電力福島第一原発の廃炉計画が30~40年以内に成功する見込みは低く、代替案が求められると指摘し、具体的な代替案を提示。

半世紀にわたって続けてきた脱原発活動

フランスから日本へプルトニウムを輸送するあかつき丸に対する抗議行動(1993年)
フランスから日本へプルトニウムを輸送するあかつき丸に対する抗議行動(1993年)

グリーンピースは約半世紀前、アラスカでの核実験をやめさせるために立ち上がった人々の手で設立され、以来ずっと、核問題にとりくみ続けてきました。

日本の原発政策には最初から、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムから燃料をつくる再処理計画がありました。国内で再処理ができないため、海外に使用済み核燃料を送り、プルトニウム単体、もしくはプルトニウム燃料にして日本に戻しています。グリーンピースは、使用済み核燃料の再処理にも、プルトニウムの輸送にも、初めから反対してきました。1970年代後半ごろのことです。1991〜92年に船でフランスからプルトニウムが秘密裡に輸送された際には、船で日本まで追跡し、航路を公開しました。輸送航路の周辺国と協力して反対もしました。事故が起きれば、輸送航路の周辺国も被害をこうむるからです。

1999年の東海村JCO臨界事故や2007年の中越沖地震の際も、現場にスタッフを派遣し、放射能調査を実施しています。

茨城県東海村での放射能調査(1999年10月)
茨城県東海村での放射能調査(1999年10月)

未来のためにできること

2011年当時、日本には54基の原発がありました。現在は33基。そのうち稼働しているのは8基です(2023年2月現在)。これだけの数に抑えてきたのは、原発に反対し粘り強く行動してきた人たちの力です。

昨年始まったロシア政府のウクライナ侵攻に伴い、世界の燃料エネルギー市場の混乱が続いている一方で、政府は、これに乗じて原発の最大限活用に方針を転換しようとしています。でも、原発は気候変動の対策にはなり得ません。省エネとエネルギーの高効率化、環境負荷を極力低減した上での自然エネルギー利用への転換が、子どもたちがこれから生きていく未来のために、私たちがとるべき最善の解決策なのです。

原発のない未来をつくるために

今の子どもたちが大人になった社会、次の世代が生きていく社会で、少しでも安全に暮らせるように、”どこかの誰か”がリスクを負うような不条理をなくすために、「原発なし」で二酸化炭素排出実質ゼロを達成することを、政府に求めます。ぜひ、以下のページでご署名をお願いします。

https://www.greenpeace.org/japan/act/fukushima10th

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