[Next100 PROJECT – スタッフVoice vol.3]
グリーンピース・ジャパンのスタッフ、一人ひとりの考えや今までの背景を紐解き、新たなビジョンとして策定した「地球の恵みを、100年先の子どもたちに届ける。」への思いをご紹介します。3回目は、グリーンピース・ジャパンの気候変動・エネルギー担当で、CO2を出さないゼロエミッション車へのシフトを加速させるキャンペーンを担当しているのDaniel Read(ダニエル・リード)のインタビューです。日本の基幹産業である自動車業界に働きかけるキャンペーンを率いる彼には、大切にしたい思いがありました。
© Chiaki Oshima/Greenpeace

キャンペーンはまずリサーチ。根拠をもとに企業へアプローチする

オーストラリア出身のダンさん。流暢な日本語で、担当しているドライビングチェンジキャンペーンが目指す「自動車業界の脱炭素化」のために、業界に求めていることから説明を始めました。

「自動車業界に求めているのは、大きく4つ。①化石燃料車の新車販売の中止、②サプライチェーンの脱炭素化、③再生可能エネルギー普及のためのアドボカシー(政策提言等)、④モビリティ(移動)自体を再考し、車を作って販売するというビジネスモデルから、車を販売せずに人々の移動を助ける’カーシェアリンやサブスクリプション’といった、新しいビジネスモデルへの転換。これらを決定し、その実現のための計画を立て、実行するところまでを僕がリードしています」

企業へのキャンペーンとはいえ、グリーンピースの求めることに企業がいきなり耳を貸してくれることはないでしょう。そこでまず行うのはリサーチ。自動車業界が環境にもたらす影響や各自動車メーカーの脱炭素化などを調査し、2021年に『Auto Environmental Guide 2021』を作成、世界トップ10の自動車メーカーの脱炭素化の取り組みをランキングしました。そこで最下位になったのがTOYOTAです。

「日本の自動車メーカーに報告書を送付して、対話の可能性をさぐっていきます。メディアにも公開することで社会の注目が集まれば、企業にとってはプレッシャーになります。僕たちが求めるのは環境保護ですが、企業が求めるキャンペーンでは、ビジネス面を考慮したうえで、取るべき行動を企業に対して提案していくんです」

専門用語を交えながらよどみなく説明するダンさんですが、通訳と翻訳の修士号をとった後、日本で5年間ほど環境NGOなどで働き、通訳だけではなく、環境問題を解決に導くための調査や、企業や政府への働きかけなど、業務が広がっていました。

2020年7月からグリーンピース・ジャパンに入職。翌年3月に始まったドライビングチェンジキャンペーンの担当となります。「この業務に就いてから、毎日、自動車業界関連のニュースや情報に触れています」と、日々の積み重ねから知識を増やしています。

「化石燃料も原発も使わない、持続可能な再エネ100%の気候・エネルギー政策を」求めて、他のNGOとともに署名を提出(2021年4月)

そんな業務の中で印象に残っていることを尋ねると、「2021年12月にTOYOTAが開催した『バッテリーEV戦略発表会』のことですね」と、即答が返ってきました。TOYOTAのバッテリーEV(電気自動車)戦略の発表会に招待されたのは、国内外のメディアばかり。その中にダンさんもいたのです。

「社長への質疑応答で、僕たちの作った報告書を取り上げて、“環境保護団体からこのような批判も出ていますがどう受け止めますか?”と質問した記者がいました。僕たちの作った報告書がこんなに読まれて、メディアが注目する中で社長が答えなければいけない状況になって、うわ~ってすごく興奮しました」

さらに、その場に招待されたこと自体にも大きな意味があるといいます。「グリーンピースを、TOYOTAにとってのステイクホルダーであると認めているということなんです」と説明します。つまり、自動車業界の脱炭素化についてさまざまなコメントを出したり、調査をしてまとめて報告書を作成したりといった活動を通して、グリーンピースが自動車業界から無視できない存在と思われるようになったということ。その結果、企業との対話が実現し、より強力な働きかけが可能になることが考えられます。キャンペーンがより力強いものとなるのです。

東京・代々木公園で行われたTOKYO RAINBOW PRIDE2022のグリーンピースのブース
© Chiaki Oshima/Greenpeace

普通って何だろうと問いかける

ダンさんにはもうひとつ、グリーンピースのダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容と活用)アンバサダーという肩書もあります。これは、ダイバーシティ&インクルージョンについての知識や理解をスタッフに広め、グリーンピースが持つ価値観を浸透させるためのポジションです。

具体的には、沖縄文化に関するセミナーや国際女性デーにちなんだセミナーを実施したり、4月に代々木公園で行われたTOKYO RAINBOW PRIDEで出展したり、スタッフが知識を広める場を設けてきました。

「僕は、どれだけ日本語を話せても日本人ではありません。この国ではマイノリティなんですね。その当事者であることを活かしていきたいと思っています。国籍のことだけではありません。LGBTQコミュニティの人のことを考えずに、男性に対しては“彼女いますか?”と聞くのが当たり前になっていたりする。普通って何だろう、誰にとっての普通なんだろうって思うんです。だからできるだけいろいろな課題について、スタッフみんなの理解を深め、視野を広げていきたいと思っています」

「環境保護を本業としているけれど、環境以外にも大切なことがあると訴えたい」というダンさんだけに、「あなたが望む100年後の未来の姿」も、実に彼らしいものでした。

「再生可能エネルギー100%にはなっているかな。でも、“完全に”持続可能な世界になっているかと言うと、どうだろう」という答えのポイントになるのは、「完全に」と強調した点。

「技術が進んでさまざまな問題は解決するだろうけど、心にある問題を解決しなければ、“完全に”持続可能な世界にはならないですよね。たとえば人種差別とかアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)とかはなくならない。未来の姿を考えると、人の心にある問題を解決していかないといけないと思いますね」

インターナショナルで多様性のあるグリーンピースの職場環境が大好きと微笑むダンさん。自然環境とそこに生きるすべての人たちへの熱い思いを胸に、キャンペーンの成功を目指します。


© Chiaki Oshima/Greenpeace

Daniel Read(ダニエル・リード)

気候変動・エネルギー担当
ドライビングチェンジ・キャンペーンプロジェクトリード

オーストラリアのブリスベン出身。フリーランス通訳として活躍し、2015年に来日。通訳として働きながら「意味のある通訳」を探してNGO活動を始めた。核兵器廃絶、持続可能性、そして異文化理解などの課題に取り組みながら、世界中旅して60か国以上を訪ねた。2020年7月グリーンピース・ジャパンに入職。気候危機キャンペーンの一環として日本のメガバンクの石炭融資に関するキャンペーンを担当後、2021年より現職。

ダンと一緒にグリーンピースで働いてみたいという方は、ぜひ以下の求人情報をご覧ください。

https://www.greenpeace.org/japan/aboutus/job/2022/02/21/55570/
[Next100 PROJECT – スタッフVoice]
vol.1グリーンピース・ジャパン事務局長、サム・アネスリー
vol.2コミュニティアウトリーチ担当、儀同千弥
vol.3気候変動・エネルギー担当、ダニエル・リード
vol.4プラスチックキャンペーンプロジェクトリード、大館弘昌
vol.5気候変動・エネルギー担当、鈴木かずえ
vol.6オンラインコンテンツコーディネーター、林恵美
vol.7プログラム部長 高田久代
vol.8リレーションシップマネジャー 石川せり
vol.9人事部 吉江 猛

Next100 PROJECT website