グリーンピースが1971年に誕生してから今年でちょうど50年になります。その間、一緒に世界中の環境破壊の現場を訪れ、地球のために活動を共にしてきたグリーンピースの船。私たちは現在、船を3隻所有しています。虹の戦士号、アークティックサンライズ号、そしてエスペランサ号。

その船の中でも、日本に何度も着港し一緒に活動するなど関係の深かった「エスペランサ号」が2020年の12月で役目を終えました。そして同時に新しく造られた「ウィットネス号」の運行が開始されます。
この新しい船出のタイミングで、エスペランサ号の活動を振り返りながら、グリーンピースにおける船の役割と、他の船をそれぞれご紹介したいと思います。

グリーンピースが船で活動する3つの理由

1, 目のとどかない環境破壊の現場に足を運ぶ

日々世界中で起こる環境問題の”今”を迅速に正確に伝えること。現場の実態は報道されないことが多々あります。特に、人の目が届かない陸から遠く離れた海では、さまざまな環境破壊が行われています。

1995年。英国のシェルが管理する北海に浮かぶ原油貯蔵施設「ブレント・スパー」は老朽化を迎え、そのまま海洋に投棄されることになっていました。このままでは、石油や有害物質が残され海洋汚染につながるとしてグリーンピースが船で現場を訪れ、そして海洋投棄しないように訴えました。そして、処分方法をめぐってヨーロッパを中心に議論がおこり、シェルは海洋投棄の計画を撤回。ブレント・スパーを陸上で解体し、リサイクルすることが決まりました。さらに、これを機に同様の設備を海に投棄することが国際的に禁止されました。

2, 科学者と一緒に専門的な調査を実施

ウミガメの赤ちゃんが育つ北大西洋のサルガッソ海では、米フロリダ大学と協力し、プラスチック汚染によって、ウミガメがどのような影響を受けているかを調査しました。ここで記録されたデータは、サルガッソ海の象徴的な海藻が、ウミガメの赤ちゃんの成長にどのように作用しているのかを判断するのに役立ちました。

日本でも、東京電力福島第一原発事故の際、福島県沖に船を派遣し、放射能の海洋汚染調査を行いました。また、米軍の新基地建設が予定されている沖縄県・辺野古にも船を派遣し、辺野古を守ろうとする市民の声を世界に発信しました。

3, メディアを通じて世界中に発信できる 

CNNがさきほどのサルガッソ海の調査に同行しその模様を番組で特集したり、ほかにもアルジャジーラ、ガーディアン、ロイター通信、日本からは共同通信など世界的なメディアがグリーンピースの船での調査活動に同行して報道しています。

また、1993年には、旧ソ連時代から核のごみを海に捨て続けていたロシア海軍が日本近海で核廃棄物の投棄を行った現場の撮影を行い、投棄現場から映像を配信し、世界で大きく報道されました。そして、国際世論が高まった結果、ロンドン条約の締約国会議で、「放射性廃棄物の海洋投棄の全面禁止」という歴史的決議が採択されました。

エスペランサ号

”エスペランサ”とはスペイン語で「希望」。グリーンピースの環境保護活動に参加してくださる世界中の方々からの公募で名づけられました。

グリーンピースの船の中で最も大きく、最も速い船でした。
かつてロシアの消防船だったエスペランサ号は、2002年、グリーンピースの船としての就航しました。

2005年、南極海の航海の後、世界の4~5つの海域を14カ月に渡って航海し、それぞれの海域で起きている過剰漁業、汚染、違法漁業などの問題や脅威を明らかにしました。航海中、海洋保護区の地球規模ネットワークの地図を作成し、海洋保護区の必要性を訴えました。

2007年には那覇港に入港し、新たな米軍基地建設に反対している地元の現状を広く世界に伝え、辺野古の海にすむ絶滅危惧種のジュゴンを守ることを訴えました。

約20年間地球を環境破壊から守るため、世界中を航海し、2021年末に引退を迎えました。

ウィットネス号

そして今回新たに仲間入りしたのが、ウィットネス号。グリーンピースの船団の中で最も新しく、最も環境に優しい船です。全長22.5メートルと最も小さく、リフティングキールとラダーを備えているため、大型船では近づけない浅瀬を航行することができます。

2003年に南アフリカで造船され、当時はペラジク・オーストラリス号(Pelagic Australis)と呼ばれていました。2021年9月にグリーンピースカラーである緑色の船体で進水し、ソーラーパネルや風力タービン、最適な電力管理システムなど、環境に配慮した改良を施した上で、ついに今年、運航を開始します。

船の移送中、ケープタウン港で伝統的なセレモニーを受け、船と乗組員の幸運を祈りました。ケープタウンからアゾレス諸島を経由してアムステルダムまで、6週間で航海しました。

アークティックサンライズ号

砕氷船として設計されたアークティックサンライズ号は、文字通り北極(Arctic)や南極を航海し、地球上で最も寒い場所で起きる汚染や環境破壊の驚異を目の当たりにしてきました。

1995年にグリーンピースの船隊として、北海で沖合の石油による海洋汚染を記録したのが始まりです。それ以来、コンゴやアマゾンなど地球上のあらゆる場所を訪れ、近年では南極の生物多様性に関する科学的調査のために3カ月間南極に遠征しました。

レインボーウォーリアー号(虹の戦士号)

グリーンピースは1978年から長年、この虹の戦士号で航海してきました。現在の帆船は2011年から世界の海をパトロールしています。

北米先住民族の伝説にちなんで名付けられた虹の戦士号は、環境保護を願う世界中の人々に支えられ、一般の人が近づくことが難しい環境破壊の現場へも赴いてその現状を世界へ発信するという、グリーンピースの活動の中で重要な役割を果たしている船です。

中でも、その名が最も注目を浴びることになったのは、1980年代から90年代にかけてのフランスの核実験への反対行動でした。

フランスのシラク政権の誕生で、一時停止されていたフランスの核実験の再開が発表されると、日本の国会議員3人とともに、虹の戦士号で実験海域に近づき抗議を行ないました。これにより、かつてなかったほどの大規模な国際世論を作り出し、当初8回予定されていた核実験は6回で断念され、そしてついに、1996年国連総会において、包括的核実験禁止条約(CTBT)が採択されました。

このように、太平洋での核実験の反対や、海中のプラスチックの記録、北極での気候変動の影響の調査や、異常気象で荒廃した地域への人道的支援など。今までのグリーンピースの活動の中で、船があったからこそ実現したものもが多くあります。

そして、グリーンピースが活動するにおいて大切にしているものに、専門性と独立性があります。

政府や政党、企業から資金援助を受けず、寄付サポーターの方からの寄付だけで行動し、中立の立場で平和的に活動してます。現地へ足を運び、世界の科学者とともに、最新の科学調査を実施・活用しながら、環境問題の解決策を提案しています。

新しいウィットネス号を仲間に加え、グリーンピースの船旅は続きます。船と共に続く私たちの活動を、ぜひご寄付でも支えてください。

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