「ゼロエミッションを実現する会」の横浜のチームが約2万7千筆の署名を文部科学大臣に手渡した(2023年8月23日)
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日本には断熱性が低く、エアコンが十分に効かないために、危険な暑さにさらされる教室があります。2023年8月29日に、学校教室の断熱を求め、市民の署名約2万7千筆と要望書が文科省に提出されました。危険な地球温暖化の影響から子どもたちをまもる大事な一歩となりました。署名は今後も継続します。

▼この記事を読むとわかること

> 8月29日、26,816人分の署名を仲間とともに大臣に提出
> 記者会見で、子どもの窮状と断熱という解決策を訴え
> 学校が暑いことを知っていた大臣に改修の必要を訴え
> 断熱改修には使われていない交付金
> メディアの注目集まる
> これからできることは?

8月29日、26,816人分の署名を仲間とともに大臣に提出

グリーンピースからもよびかけていた学校の断熱改修を求める署名にご賛同くださったみなさま、ありがとうございます。8月29日、26,816人分の署名を仲間とともに、永岡桂子文部科学大臣と井出庸生副大臣に手渡すことができました。明確な回答はなかったものの、子どもたちが過酷な暑さの環境におかれていることと、断熱改修によってそれが解消できることをしっかり伝えることができました。一歩、前進です。

この署名は、グリーンピースが事務局をつとめる「ゼロエミッションを実現する会」の横浜のチーム「ゼロエミ横浜」が7月20日から開始したものです。

学校断熱の必要性、解決策について
日本の教室がめちゃ暑い 学校の断熱ってどうなっているの?

署名活動をおこなっている市民と専門家がおこなった記者会見
署名活動をおこなっている市民と専門家がおこなった記者会見(2023年8月29日グリーンピース撮影)

記者会見で、子どもの窮状と断熱という解決策を訴え

署名提出に先立ち、行った記者会見では以下のようなことをお話しました。

「地元の小学校に行ったとき、とても暑かったです。子どもたちが1日の大部分を過ごす教室を、夏は涼しく冬は暖かくしてほしい、と願っています」
署名活動を始めた「ゼロエミッションを実現する会・横浜(ゼロエミ横浜)」梶本寛子

「実際に藤沢市の小学校で市民がお金を集めて一教室を断熱改修しました。断熱した教室はエアコンも効きがよくなりました。しかし、市民による断熱改修には限界があります。国で取り組んでほしいです」
署名活動に加わった「ふじさわ学校断熱ワークショップ実行委員会」の藤法淑子さん

「断熱していない教室は暑くて、ハンディ・ファンやうちわを使っています。授業に集中できません。また、冬はとても寒いです。暑さや寒さに左右されずに、落ち着いた環境で勉強したいです」
教室の断熱改修を行なった長野県の高校3年生の新井アンジさん

こうしたお話に加え、署名の呼びかけ人のひとりである東京大学の前真之教授が、どれだけ子どもたちが「暑さ」の危険に晒されているか、断熱改修の効果について解説を行いました。

前真之教授の会見資料
前真之教授の会見資料

資料を使って説明された断熱改修の効果を見ると、埼玉県の小学校の例では、改修した教室では7度も温度が低くなっています。

そして、同じく呼びかけ人の一人である東北芸術工科大学の竹内昌義教授が、断熱改修で電気代の削減にもなったという実証結果を紹介しました。会見の最後、呼びかけ人の一人である長野で再エネや断熱に取り組んでいる藤川まゆみさんが、「地球温暖化が加速しています。早急な対策をしてほしいです」と訴えました。

26,816人分の署名を仲間とともに大臣に提出
「ゼロエミッションを実現する会」の横浜のチームが約2万7千筆の署名を文部科学大臣に手渡した(2023年8月23日) © 写真提供change.org

学校が暑いことを知っていた大臣に改修の必要性を伝える

会見後、文部科学大臣室で署名を手渡し、大臣と面談しました。大臣は、学校を訪問する機会がよくあり、「学校は暑い」と思っているとのことでした。前述の前真之教授が大臣室をサーモカメラで撮影した画像と、埼玉県の小学校の最上階の教室のサーモカメラで撮影した画像を見せて、子どもたちが過酷な暑さを強いられている現状(下図参照)を伝えました。

前真之准教授 大臣説明資料
前真之准教授 大臣説明資料

そして、断熱改修をすれば、エアコンの効きもよくなり、子どもたちが健康に、快適に過ごせるようになると説明しました。(下図参照)

前真之准教授 大臣説明資料
前真之准教授 大臣説明資料

断熱改修には使われていない交付金

これに対し、大臣は断熱改修にも使える交付金があると説明しました。「学校施設環境改善交付金」のことです。しかし、この交付金の補助率は3分の1で、断熱改修は1教室で100万円以上かかり、学校全体では数千万円がかかることもあり、補助率が3分の1であるこの交付金は、自治体にとっては使いづらいものとなっています。なお、どれくらいの学校がこの交付金を使って断熱改修をしているかと尋ねたところ、文科省では把握していないとのことでした。

メディアの注目集まる

教室の断熱を求める署名提出は大きな注目を集め、以下のようにマスメディアにも数多く取り上げられています。

これからできることは?

学校の断熱を求める署名は継続中です。まだ参加されていない方は、ぜひご参加ください。そしてこの署名について、ご家族やお知り合いの方にひろくお知らせください。

*署名活動は、「全国のすべての教室の断熱を」実行委員会によりおこなわれ、グリーンピースが全面的にサポートしています。

グリーンピースでは、この署名活動も支えながら、学校の断熱改修が進むよう、国、自治体に対しての働きかけを、市民のみなさんと専門家の方々とともにおこなっていきます。断熱について詳しく知ることができるイベントも予定しています。ぜひイベントでお会いしましょう。 

「断熱のはなし」〜日本の現状・気候変動とのつながり〜

【日時】2023年9月26日 20:00〜21:30
オンライン開催
【内容】
・断熱と気候変動・断熱がなぜ大切なのか
講師:鈴木かずえ(国際環境NGO グリーンピース・ジャパン)
・断熱の日本の現状・これからどんなことができるのか
講師:竹内昌義氏(東北芸術工科大学教授・エネルギーまちづくり社代表・みかんぐみ共同代表)
・質疑応答
【参加費】1,000円(グリーンピース・ジャパン継続寄付者の方は無料) 
【主催・お問い合わせ】国際環境NGO グリーンピース・ジャパン

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