国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は本日、菅義偉首相が2030年までに温室効果ガス排出量の削減目標を引き上げる方針を示す一方、引き上げ幅が46%に留まったことを受け、以下の声明を発表しました。

グリーンピース・ジャパン 事務局長、サム・アネスリー
「今回、日本政府は温室効果ガス排出量の2030年度の中期削減目標を、『2013年度比46%減』に引き上げましたが、各国の大幅な削減目標引き上げ(注1)と比べ消極的で、国際社会の削減努力に水を差す結果となりました。パリ協定のもと『1.5℃目標』に沿って『2050年の実質ゼロ』を実現するためには、日本は『2013年度比60%以上減』に目標を設定する必要があり(注2)、極めて不十分な目標といえます。

日本政府の現状の石炭火力輸出政策では、海外の石炭火力発電への公的支援について『原則支援しない』としながらも、高効率案件への支援を継続するなど、公的支援の抜け穴が存在します。気候危機の緊急性を考えると到底十分なものではなく、完全な石炭火力の輸出停止と、自然エネルギーへの転換を早急かつ着実に進めるべきです。特に東南アジアの大規模石炭火力発電所プロジェクトに関わってきた日本は、開発途上国における自然エネルギーの普及と脱炭素化に向けた経済・社会への転換に貢献することが求められています。本日から始まる気候サミットで石炭火力発電設備・関連技術の輸出停止を発表すべきです。

日本政府は、電力、自動車、鉄鋼、石油、石炭、原子力などの一部の業界ロビー(注3)の圧力に屈さず、原発事故を風化させることや、石炭火力や原発継続のための技術開発を諦め、環境、社会、経済の観点から、自然エネルギー普及を優先することを期待します」

以上

(注1)2030年までにEUは55% (1990年比)、中国はGDP比65%(2005年比)、英国は2035年までに78%(1990年比)削減を発表。米国も50-52%(2005年比)削減目標を表明した。

(注2) クライメート・アクション・トラッカーによる分析では62%削減が必要としている。

(注3)英国のインフルエンスマップ の2020年の調査発表によると、GDPの1割に満たないごく一部の業界が日本の気候変動・エネルギー政策に大きな影響を与えている。